大体ニーア・レプリカントのパロディで、大体ニーア・レプリカントの公式コンプリートガイドを参考にしています。



2003年、世界はとあるひとりの少女の計画によって絶望のどん底へと落とされる。人々は次々に絶望へと堕ち、自我を失い、破壊活動を繰り返し、一時は人類の滅亡さえも危惧された。
感染病のように絶望が蔓延する世界で、日本政府は感染経路の報告を受け、一時、希望ヶ峰学園がある新宿を物理的に封鎖することを発表。新宿周辺に巨大な壁を設置する。後にこの壁は「エリコの壁」と呼ばれるように。
4年後、エリコの壁が内側から破壊される。エリコの壁の内側から、左目の赤い大量の絶望感染者が出現。人々を無造作に襲いだし、殺戮を繰り返す。
絶望は東京(新宿)を中心に、関東圏へと感染拡大。九州、北海道へ逃亡する者が増加。国外へ逃亡しようにも、日本からの入国拒否対策が実地される事態に。
暴動による死亡者、および絶望に感染する人間が増加。
エリコの壁崩壊から2年、中国に絶望が出現。日本国外では初となる事例。その一ヶ月後、世界中で絶望感染者が発見される。
絶望を排除するための研究は進み、特別に設立された未来機関による「アルターエゴ化計画」が一般に公開される。
プログラムであるバーチャル世界にアバターを作り、そこに被験者の精神を預け、残された肉体は絶望が沈静化するまで冷凍保存される。絶望の完全駆逐が成功した折を見て、アバターに預けた魂を元の肉体へと戻すという計画だった。アバターはあくまで人を模した「器」であり、被験者の魂と完全に繋がり合うことはない。そして同時にアルターエゴ化システムの管理者として、バーチャルワールドで半永久的に動き続ける、魂を持たないプログラム、「アンドロイド」を設置。(※例:七海千明)
しかし魂を失った肉体は、一定時間の経過によって高確率で自我を失い凶暴化、その後確実に死に至るという事実が発覚。
解析の結果、被験者の元の肉体の自我を安定させるには、バーチャルワールド内のアバターに預けられた魂に半永久的に安定した希望を提供し続けなくてはいけないことが判明する。
未来機関は、かつて希望ヶ峰学園で作られた「人工希望」の存在に目をつける。僅かに残っていた過去の文献から「日向創」のデータを入手することによって、彼を機関の施設におびき出すことに成功した。
その時の日向創は後輩であり恋人でもある苗木誠と行動を共にしていた。(コロシアイ学園生活が起こっていないこの世界での苗木はあくまで超高校級の幸運という設定)
絶望の発信源である希望ヶ峰学園を逃れ、崩壊した世界の片隅で飢餓と戦いながら必死に生きていた日向は、「国から支援が受けられる」という噂を耳にし苗木と共に未来機関の施設を訪れるが、危険な実験に巻き込まれそうになったことによりそれが罠だった事実に気付く。隙を見て苗木と共に施設から逃亡した日向は新宿の廃スーパーマーケットに身を隠すが、そこで凶暴化した魂の無い肉体達に襲われてしまう。絶体絶命の状況の中、日向は自ら魂を失い凶暴化することを選ぶ。
しかし、日向は魂を失って人間以上の力を得た後も、自我を失うことはなかった。自我を持ったままの魂の抽出は、ひとえに日向が希望ヶ峰学園で施された実験によって「人工希望」としての能力を手にしていたことが原因である。
襲い来る敵を全滅させ、日向は建物の中で隠れていた苗木の元へと戻る。しかしそこには、魂を抽出する装置である「黒の書」に誤って触れてしまい、意識を失い冷たい床に倒れこむ苗木の姿があった。魂を抽出された人間は凶暴化した後に確実に死に至る。日向は絶望した。
そして未来機関は、そんな状況の日向に接触した。
「苗木を凍結すれば1000年後には絶望が消え去る世界になる」と説得し、苗木を1000年間無料でコールドスリープさせる代わりに、日向の「希望」をバーチャルワールドのアルターエゴ達に提供し続けることを要求。
日向は機関の要求に応じ、「カムクライズル」として希望を提供することを約束する。




700年後、現実世界で絶望が消滅するその時を待ちながら、「アンドロイド」はバーチャルワールドでアルターエゴ達の管理を続けていた。
しかしある時、元の被験者の魂の器でしかなかったアルターエゴ達に、徐々に意思が芽生え始める。その意思は元の被験者の人格に関係なく、バーチャルワールドで過ごした自らの経験や環境の影響を受けて成長するように。
バーチャルワールドの中で、住んでいる地域ごとに異なる文化や文明が急速に発達。アルターエゴはまるで普通の人間と同じように生活をする。この時、元の肉体の「魂」と、アルターエゴの中で芽生えた「精神」が水面下で反発し合い、現実世界の被験者の体に変化が起きる。特殊な薬品によってスリープ状態に保たれていた肉体が目覚め、自らの魂を取り戻すためにバーチャルワールドへと乗り込んでいく。
しかし元は魂のみを通すように作られていたシステムに、被験者の精神が無理やり入り込んでバーチャルワールドへと訪れた結果、器のない精神はまるでバグのように歪んだ姿として象られ、黒い体に黄色の文字列が並ぶ不気味な化物になってしまう。バーチャルワールドに訪れた被験者の精神は、日向が希望を提供する以前のように凶暴化し、自らの魂を取り戻すためにアルターエゴ達を襲った。アルターエゴ達は突如現れた謎の化物を「マモノ」と呼び、その驚異を駆逐しようと武器を持ち抗う。
その頃、アルターエゴの間に謎の奇病が流行る。身体のあちこちに黒い紋様なようなものが浮かび上がり、後に死に至るという不治の病だった。
これはオリジナルである被験者の精神が「マモノ」として殺された時、その被験者の魂を持ったアルターエゴに発症する病気であり、つまりは対となる精神を失ったことによってアルターエゴの中の魂がバグを起こし、その影響で器共々機能停止状態に陥ってしまっているからだった。
1000年以上もアルターエゴに希望を提供してきたカムクライズルは、このままでは苗木が復活しないという事実に気づき始める。

苗木誠のアルターエゴは、恋人である日向創のアルターエゴと貧乏ながらも仲良く平和に暮らしていた。しかしある日、突如現れた髪の長い「マモノ」に、日向は苗木を攫われてしまった。
髪の長いマモノの正体はカムクライズル、つまり日向創のオリジナルの精神であり、カムクラは苗木のアルターエゴから魂を取り返し、コールドスリープしているはずの本当の苗木に戻そうと目論んでいた。アルターエゴ化計画の綻びを感じ取ったカムクラは、それならいっそ絶望が溢れている外の世界で再びオリジナルの苗木と生きていく方がまだマシだと判断した。
しかしカムクラは、苗木を取り戻しに来た自らのアルターエゴに倒されてしまう。
アルターエゴ達に希望を提供し続けていたカムクラが死んだことによって、現実世界の全ての被験者たちは再び凶暴化、そして希望を提供され続けていたことによって自らの自我を芽生えさせたアルターエゴ達も活動を停止。バーチャルワールドに乗り込んできて「マモノ」と化した被験者に皆殺しにされ、また、アルターエゴ内にあったはずの魂を失った被験者も、消滅。世界は事実上の滅亡を迎えた。

自らのアルターエゴに殺され、カムクライズルは白い夢の中で膝を抱える。
「何もしてやれなかった」
カムクラは苗木のことを思い出しながら、静かに涙を流した。
才能に固執し、「人工希望」としての能力を植えつけられた自分を救ったのは、学園時代の苗木だった。苗木がいたから、自分は日向創として再び歩き始めることが出来た。やがて絶望が世界に蔓延し、混乱の渦中にあった学園から逃れ、廃墟となった新宿を一緒に歩いていたときも、飢えた苗木に満足に食べ物を与えることも出来なかった。
たったひとつのクッキーを二人で分けあって、懸命に生きた。
1000年の時を経て、結局自分は苗木を救うことが出来なかった。世界は滅び、苗木と共に生きる未来は永遠に失われた。

「日向クン」

そんなとき、自分の名前を呼ぶ声が聞こえた。カムクラは前を見る。
そこには、希望ヶ峰学園から逃れた時と同じ格好をした、制服姿の苗木が立っていた。
苗木は膝を抱えるカムクラに駆け寄って、その隣に腰をかけた。
そして、
「ずっと一緒にいてくれて、ありがとう」
と笑った。
苗木はポケットから一枚のクッキーを取り出して、「はい、半分こ」とそれを差し出した。
日向は泣きながらそのクッキーを食べた。

「……ありがとう」



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